剣   岳
(全体とBチーム)

(記・白子 八千代

剣   岳(全体とBチーム)

H8. 8. 14 〜 17 (前夜発3泊4日)

CL 山田  SL 多部  竹内  道屋  田中
 白子欽  小山  喜多  渡瀬  白子  

1日目 ( 曇 ) 全員で剣沢へ。   
2日目 台風とともに停滞
3日目 ( 雨 )
Aチーム (CL山田・竹内・田中英) は八ツ峰縦走
Bチーム (CL白子欽・多部・小山・渡瀬・白子八) は・峰Cフェース剣稜会ルート登攀
Cチーム (CL道屋・喜多) は剣本峰へ縦走
4日目 (快晴) 全員下山

8月13日
20:30 和歌山発 (車2台)

8月14日 (曇→小雨→晴)
3:30 立山駅 ケーブルの時間待ち約2時間 (始発は5:40)    
5:50  ケーブルに乗る
6:00 美女平着 バス時間待ち30分。 10・以上の荷物は1つ300円で室堂へ運んでくれる。
7:10 室堂駅着 装備の一部を駅に預けたがザックの平均重量は20・を越える。
8:00 室堂駅出発  
9:00  雷鳥沢  高山植物と雪渓の雪は例年より多いそうだ。
9:37〜 9:50 休憩    
10:25〜10:35 休憩    
11:05〜11:20 剣御前小屋前 霧が出てくる。
11:50 剣沢キャンプ場着 富山県警の山岳警備員の人が、 「大型の台風が来そうなので、 小屋に避難した方がいい」 という警告をしてくれるが、 この時点では撤収するパーティーはなく、 私たちもテントの張り綱を補強して昼寝。
16:30 気象情報と警告が繰り返される。 ミーティングの結果、 CLの山田さんが 「テントでがんばることにするが、 小屋に泊まりたい人は泊まってもいい。」 と決断。 道屋さんと喜多君が小屋へ。 家族連れや女性ばかりのパーティーなどは雷鳥沢へ下りていった。
17:00 残った8人でテントの張り綱をさらに補強し、 テントの周囲に石を積み、 ピッケルをツルハシに変えて溝を掘るなどの土木作業に励む。意外と楽しい。 でも、 ニコニコしながらどこからか大な石をころがしてくる“マサカリかついだ小山君”に勝てる者はいない。 完成した3基の 「要塞」 にそれぞれ入り、 さあ、 どっからでもかかってこんかい! … 金色に光る雲の破片が飛び去り、 黒雲がわく。      
20:00 就寝

8月15日(台風) 
0:00 大雨の音で目がさめる。 しだいに暴風雨となりテントのポールが寝ている顔を叩きにくる。
最大風速30・以上、 中心気圧 980 ヘクトパスカル、 大型で並みの強さの台風が能登半島に上陸。
8:00 山田さんと多部さんがいたテント (エスパース) のフライが破られたため、 残る2つのテントに入る。 外のテントの数はかなり減り、 トイレは一時避難している人でいっぱいらしい。 そのトイレに行くこともままならないほどの暴風雨が延々と続く。 雨は溝をちゃんと流れていたのにテントの中は浸水。 特にダンロップテントの方は、 コッヘルで何度も水を汲み出さなければならないほど・・・英子さんが無邪気におもしろがるので悲愴感はなかったが。
14:00 台風はご丁寧に富山・新潟・青森・山形をゆっくりと踏んでから三陸沖へ。 暴風雨衰えず。        16:30 喜多君が小屋で天気図を書いて無線で報告してくれる。 道屋さんは小屋の人に怒られながら私達のシュラフを小屋の乾燥室で乾かしてきてくれる。 風は弱まるが、 雨は夜中まで続く。

8月16日(曇り→雨)
4:00  起床
雨は止んだものの、 ガスっている。 台風一過の晴天を期待しつつ……。
5:30 A・Bチーム出発  (少しあとからCチームも剣本峰へ出発)
6:30 剣沢雪渓と長次郎雪渓の出合
8:30 長次郎雪渓と5・6のコル取付の出合 雪渓がかなりの急勾配になる。 雨が降り始める。
Aチームは5・6のコルへ、 BチームはCフェイスへ。

====ここからBチーム====
9:30 Cフェイス取り付き 夏ならビバークできる岩穴あり。 本格的に雨が降ってきたが、 先行パーティー は登り始めた。 1ピッチめ小山君リード。 岩は濡れていても滑らずホールドも多い。
11:00 2ピッチめ (渡瀬君リード) 終了。 寒さと冷たさに 「わしらがこんなことすると、 なんでいつもこんな目に遭うんや……?」 と多部さんがいつものユーモラスな口調でぼやく。
12:10 核心部の3ピッチめ (白子欽リード) 終了。
13:30 最後の5ピッチめ (渡瀬君リード) 終了し、 Cフェース登攀成功。
14:10 踏み跡をたどって下りはじめるが……。  
14:15 2パーティーがハーケン3本とシュリンゲが1本だけの支点を使っ て懸垂下降しているところに出会う。 すぐ下はつるつるの一枚岩が40m…? ガスで見えなかったため、 懸垂を繰り返す先行パーティーを信じて順番を待つ。
15:20 2回めの懸垂を終えた地点で、 ルート間違いに気づく。
16:00 無線で山田さん達に相談した結果、 引き返すことに決め、 最後部のパーティーに借りたザイルをつかんで登り返す。 多部さんが見つけ てくれた道を下りる。 すぐに太い木の枝に何本ものシュリンゲをかけた支点発見。
17:40 懸垂401回で5・6のコルに到着。
(Cフェース終了地点→5・6のコルは30分程度。)      
18:00 右下のガレ場を少し下って、 長次郎雪渓へ出る。
交信し、 「全員元気なので (ビバークしないで) 帰る」 と伝える。 夜の冷えこみで雪渓上の雨が凍っている上、 クレバスも多い。 軽アイゼンの渡瀬君と白子欽は苦労した。 アイゼン無しの多部さんはもっと大変だった。 いつもならアイゼン無しでも駆け下りてしまえる人なので、 装備は技術以上に大切だと思った。
20:00 長次郎谷・剣沢出合 星空を見上げて、 ふと昨日停滞中のテントの中で、 山田さんと竹内さんが昔の山行の思い出を語り合っていたことを思い出す。 自分達にも、 この暗く冷たく美しい山の夜をなつかしく思い出す日がくるのだろうか。
22:20 雪渓から山道に入ってから道を間違えたが、 慎重に引き返して広い山道を見つけ出す。 すぐに小屋の灯。 いつもは耳障りな発電機の音もうれしい。
23:00 テント場到着。 山田さんと竹内さんは迎えに来てくれる相談までして下さったそうだ。 道屋さんと喜多君が作ってくれたシチューが冷え切って疲れた体に有難い。 英子さんはすぐに寝られるようにテント内を整えて、 念のために小屋でガスを買い足してくれていた。

====ここまでBチーム====

8月17日 
6:00 起床 快晴        
7:45  出発 
8:15〜8:30 別山乗越 
9:00〜 9:15 剣御前小屋前    
10:00〜10:10 雷鳥沢  
10:40〜10:45 休憩  
11:20 室堂着   
24:00 和歌山着

【教訓】
その1 赤のダンロップは側面と底面の境目に溝を掘る。
その2 大雨の日は、 エアマット (水を吸い続ける) より銀マットの方が快適。
その3 シュラフカバーは起きている時は荷物全部を水から守ってくれる。

【わしらがこんな目に遭った理由及び反省】
その1 往生際が悪かった。 → 悪天だと岩は登れても帰り道を間違う可能性大。
その2 全員ではないにせよ装備を削りすぎた。 → 雪渓は凍るので、 10本歯以上のアイゼン必携。
その3 地図も見ず先行パーティーについていった。 → 相手も初めて来ている可能性がある。
その4 やみくもに踏み跡は正しいと信じてしまった。 → 多くの人が間違えた跡か別ルートの可能性あり。
その5 頼りない支点を疑わなかった。 → 人気ルートにはしっかりした支点があるものである。
その6 おっちょこちょい。 (ガスは持っていったがコッヘルを忘れた。) → 死ぬまでにはなおしたい。