槍ヶ岳

(春山合宿)

(記・白子八千代

H.12.5.3〜5

CL白子八 細尾 

〈感想〉
 冬に一度行ったことのあるルートで天候にも恵まれたため、心細かったふたりきりの雪山登山が結果的にはのん気な山行になった。今後、実力を過信することのないように気をつけたいと思う。

 初日は曇り時々晴れ。細尾さん、風邪でしんどそうではあったがトレーニングの成果発揮。 
 槍平小屋もトイレも水場も今回は雪に埋っていた。(小屋の屋根が見える程度)
 2日めの朝、星なく雪・風あり。停滞するほどの悪天候でもなさそうだが、雪山において自分で判断を下したことがないから自信がなく、一番早く(2:30)起きていながらまわりのパーティが動き出すまでぐずぐずしていた。5時頃稜線がはっきりし、雪やむ。ようやく撤収。
 曇り一時晴れで登りやすい気温。飛騨沢上部はただでさえ風が強いのに、ヘリコプターが何度も上空を通過してそのたびにゴォーッと谷を渦巻くような風が吹いた。そんな中、10人くらいのパーティが大きな岩の下にテントを張ると言う。雪崩は大丈夫かと聞いたところ、「この岩がよけてくれる。ひとりがバテてしまってるし、槍のテント場は最悪だから。」とのこと。思わず鼻ぐじゅ状態の細尾さんの顔を見るが、彼女の体力を信じて上に行くことにする。頭の上を雪崩が吹っ飛んでいくなんてぞっとするから。
 彼等の言葉通り、槍の肩のテント場は雪面凍り傾斜あり強風・・と最悪!! 槍沢側はどのへんから雪庇なのかわからず不安だったので、風の強い飛騨沢側でテントを張るのに苦労している(数cmの雪の下は氷)と、見かねたのか、男の人が「槍沢側の自分のテントの下に張ればいい、この雪の下は間違いなく地面だから」とアドバイスしてくれた上、張るのを手伝ってくれた。「なにもかもふたりだけでやる」気概などみじんも持っておらず、人の援助を喜んで受ける私たちであった。
 幕営の疲れと穂先渋滞とガスのため大休止。それらの解消を見計らってアイゼン、ピッケルで出発。鎖も階段も雪から出ている上、新しいフィックスまであったので難なく登る。
 頂上は、雲は少しあったが360度の大展望。長いこと槍にツイてなかった細尾さん大喜び。ちなみに「北鎌尾根→」と書いた石は地震多発の年に落ちてしまったそうである。
 雪が腐っているので下りはちょっと緊張。にもかかわらず細尾さん、「エビのシッポ」を撮り始める。雪山に重いカメラを持ってこれたのは初めてなので、ハラハラしながらも黙って待つ。
 その夜はさすがに寒さと風の音と横からテントを押してくる雪の冷たさで眠れなかった。
 テント場から御来光を拝む。東鎌尾根の上の雲海から日の出。
 飛騨乗越までの下りは冬に来た時は岩と氷のミックス、今回は雪に覆われステップきったトレースあり。山田会長から注意するようにと言われていた所なので慎重に下りる。
 乗越からしばらくは凍っていてアイゼンがよくきいた・・・が、細尾さん、また写真を撮りたいと言い出す。カメラはザックの中。「ここは滑るし急やからアカンよ。万一ザックを落としたら下の人が・・・」と言いながら振り向くとすでにザックを下ろしてしまっていた。「もう!」と怒っても「うふふ。」と笑ってカシャンカシャン・・・うふふやないっちゅーねん。
 冬は宝の木から左へ、すなわちテント場の方へ向きを変えて下りたが、春はずっと下で曲がる。たぶん夏道と同じ。その宝の木の近くに人が2人いて、彼等からアザラシ(山に!?)みたいな灰色の物体がごそごそと離れていってた・・・下りるにつれ、それが中に荷物を入れたテントらしいと、同時に彼等も気付いて大慌てで追いかけてつかまえていた。爆笑。
 スキーでカッコよく下りる人ひとり、同じくスキーでコケながら下りる人ひとり。
 右手は冬に登った中崎尾根の向こうに真っ白な双六岳、前方は白い笠そのものの笠ヶ岳、左は青空突く穂高連峰。
写真撮影重視で下りていたら全員に抜かれてふたりきりに。
GW快晴の北アルプスでかし切りなんて!
 穂高平で大休止のち新穂へ。
 地図と首っぴきで白骨温泉へ。
 家に着き、朝方、岩から帰ってきた白子に「このおてんば!」と言われたが、細尾さんに比べれば私なんか大和撫子である。これにつき異議申立ては却下。

〈参考〉
1 新穂手前のトンネルの途中、左側に「深山温泉」の看板が出ている所を下りた所に無料の大駐車場あり。
2 EPIガスカートリッジはパワープラスタイプの小1個で約4時間。沸かすのに多少時間がかかったような気はするが、テントが小さいせいか(?)十分暖かかった。(小を4個持っていって2個半余った。)
3 アルミのテントシート(1m×2m、厚さ2mm、580円、150g)は下からの冷えをかなり防いでくれる。濡れても拭けばOK、床が冷たくなく、エアマットが濡れてこず快適。

〈反省〉
1 槍平でペグに使った木の枝を持って登るのを忘れた。予備の割り箸やカラビナで代用。
2 強風の中でテントを張る要領を学び、練習しておくべきだった。
3 沢の出合を通過する場合、雪崩の危険を考えて早く出発するか、速く歩くかするべきだった。
4 忘れ物に注意する。